■講座のポイント
第10回の演習では、専門家であってもAI生成物の誤りを見抜くことが難しく、レビュー時間を増やしても検出には限界があることが観察されました。人による全件確認は、それだけでは品質保証になりません。第11回で「人・プロセス・システム」の三本柱を設計したのに続き、第12回は「AIが人の指示を待たずに動き始めたとき、人はどこに立つのか」を主題とします。
本セミナー(収録120分)では、まず2026年8月時点で実務に使える主要AIモデル(Claude Opus 5/Claude Fable 5、GPT-5.6 Sol・Terra・Luna、Gemini 3.6 Flash ほか)を「性能順ではなくContext of Use・リスク・必要な証拠・処理量・費用で選ぶ」という観点から整理します。
続いて、EU AI Act 第14条(human oversight)が監督者に求める5つの能力、FDA・EMA『Good AI Practice 10原則』、CDERの2026年計画に新規掲載された「AIベースシステムのCSA」補足ガイダンス、Digital Omnibus による高リスク義務の適用延期など、直近の規制動向を、確定情報と二次情報を区別して解説します。
本編の中核は「ループエンジニアリング」です。AIとの関わり方をプロンプト/コンテキスト/ハーネス/ループの4段階に整理し、それぞれがGxPの何に対応するのか(作業指図の書き方/参照文書の提供/SOP・OQ・PQ・監査証跡・アクセス管理/変更管理つきの自動実行)を対比します。そのうえで、ある工程をHOTLへ移してよいかを判定する第1ゲート(受入基準・独立した統制・取消可能性・影響度の4つの問い)と、運用開始の条件である第2ゲート、機械判定にできる項目とできない項目の線引き、レビュー席に代わる人間の「3つの席」(設計時・例外時・事後)、キルスイッチと権限の非対称設計を提示します。
最後に、FDAの公開データを機械的に取得できる openFDA API を題材に、Claude Code で「ハーネスを先に作り、そのうえでアプリとループを作らせる」実演をご覧いただきます。CLAUDE.md(禁止動作・受入基準・停止条件・エスカレーション・監査証跡)を先に承認し、人はテストが落ちたときと判断が要るときだけ呼ばれる、という運用の具体像を、製薬企業向け(安全性シグナルの定期収集)と医療機器業界向け(回収・不具合・承認動向の監視)の2本立てで示します。
■受講後、習得できること
・Human in the Loop と Human on the Loop の違いを、権限と記録の設計として説明できる
・自部門の業務のうち、AIを自動で動かしてよいものと人の承認を挟むべきものを、4つの問いで判定できる
・受入基準にできる項目(形式・完全性・参照可能性・数値一致)と、人の判断として残す項目を切り分けられる
・GxPハーネスの7要素と、停止条件・エスカレーション・監査証跡の設計要点を挙げられる
・自動化に必要な安全装置を、査察官に説明できる言葉で述べられる
・EU AI Act 第14条が求める監督者の5つの能力を理解し、自社の教育・力量要件に反映できる
・FDA・EMA『Good AI Practice 10原則』およびFDAの2文書(AI利用ドラフトガイダンス/CSA最終ガイダンス)の位置付けを区別できる
・2026年8月時点の主要AIモデルを、用途とリスクに応じて割り当てる考え方を身につけられる
・openFDA API の概要と規制業務での使いどころ、および「APIの結果だけで規制判断をしない」という限界を理解できる
・自社の1業務について、トリガーから停止条件までのループ設計案を書ける
■本テーマ関連法規・ガイドラインなど
・EU AI Act(Regulation (EU) 2024/1689)第4条・第5条・第14条・第17条・第50条/Digital Omnibus on AI(二次情報)
・FDA『Considerations for the Use of Artificial Intelligence to Support Regulatory Decision-Making for Drug and Biological Products』ドラフトガイダンス(2025年1月)
・FDA『Computer Software Assurance for Production and Quality System Software』最終ガイダンス(2025年9月)/CDER 2026年ガイダンス計画(AIベースシステムのCSA補足ガイダンス)
・FDA・EMA『Guiding principles of good AI practice in drug development』(2026年1月14日)
・ISO/IEC 42001:2023(AIマネジメントシステム)/EN 18286:2026(CEN-CENELEC、2026年7月12日承認)
・ISPE『GAMP Guide: Artificial Intelligence』(2025年7月)/GAMP 5 Second Edition(2022年7月)
・EMA Reflection paper(EMA/CHMP/CVMP/83833/2023、2024年9月)
・PMDA『業務に対するAI活用行動計画』(2025年10月10日)/生成AI利用開始(2026年4月15日)
・21 CFR Part 11/21 CFR Part 820/ICH Q9(R1)/データインテグリティ(ALCOA+)
■講演中のキーワード
・Human in the Loop(HITL)/Human on the Loop(HOTL)/Human in Command(HIC)
・ループエンジニアリング/プロンプト・コンテキスト・ハーネス・ループの4層
・GxPハーネスの7要素/受入基準/停止条件/エスカレーション/キルスイッチ/権限の非対称
・監査証跡(audit.jsonl)/変更管理/供給者・モデル管理/定期レビュー
・第1ゲート・第2ゲート/人間の「3つの席」(設計時・例外時・事後)
・オートメーションバイアス/context advantage(文脈の優位)/速度の違う三重ループ
・コンテキストサイズ/コンテキストエンジニアリング
・Claude Opus 5/Claude Fable 5/GPT-5.6 Sol・Terra・Luna/Gemini 3.6 Flash/Claude Code
・openFDA API/JSON/安全性シグナル/回収・不具合・承認動向の監視
・EU AI Act 第14条/Good AI Practice 10原則/CSA/Context of Use/ISO/IEC 42001/EN 18286:2026